Enable AI Foundry(EAF)とシャープが開催したセマンティックカメラハッカソン「Semantic Camera で未来を創ろう!」でワクワク賞を受賞したのは、「家憶(かおく)」だった。家電や植物にカメラを持たせ、それぞれの「目」を通じて家庭の日常を記録・記憶し、必要な時に引き出せるようにするというコンセプトだ。

八百万の神と、こぼれ落ちる暮らしの記憶

荻野氏は普段はコネルというクリエイティブチームで活動し、そこでも「文化と発明」という言葉を大切にしているという。

文化なき発明はただの技術になり、発明なき文化は衰退する。日本には八百万の神、つまり物理空間にインテリジェンスがあるという思想に基づいた文化的な優位性がある一方、暮らしの記憶は日々こぼれ落ちていく。

特別な思い出は写真や動画に残るが、日常の何気ない瞬間は失われてしまう。ただの記録ではなく、必要な時に引き出せることが記憶としての価値になる。もし家電や植物に記憶と意志が宿るとしたら。

この問いから「家憶」は生まれた。冷蔵庫、エアコン、植物、洗濯機がそれぞれ人格を持ち、ユーザーはそれぞれのものの目線を通じて家全体の記憶を引き出せる。家という空間自体が記憶の器になるのだ。

エッジで映像をテキスト化し、エージェントと会話する

システムは Jetson Orin Nano をエッジデバイスとして使用。YOLOv8 で映っているものをテキスト化し、クラウド上のエージェントにログを送信してデータベースに保存する。前回の状態と類似度が高いベクトルであれば重複ログを省く仕組みも入れた。エージェントには時間取得、記録検索、文脈検索のツールを持たせ、Web 上で会話しながら記憶を引き出せる。

想定されるユースケースは「一昨日の僕、何してたっけ?」「3日前、子供は何してた?」「先週のパーティーの雰囲気どうだった?」といった問いかけだ。なくし物の発見、家族の時間を言葉にできること、自分にない視点の記憶を持てることが提供価値になる。介護、子育て、共働きなど生活負荷の高い家庭では、家庭を総合的にサポートする存在を目指すと荻野靖洋氏は話す。